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能力、可能性、蓋然性、実現性をめぐる類義語について

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ビジネス英語の基本語:capability, possibility, probability, feasibility の使い分け

ビジネス英語の基本語:capability, possibility, probability, feasibilityの使い分け

2022/09/10

ビジネスマンに必要な英語語彙: capability, possibility, probability, feasibilityの使い分けについて

能力と可能性と蓋然性と実現性をめぐる類義語論

 

 

1. ビジネスマンに必要な英語力:capability とpossibility の違いについて

 今さら言うまでもありませんが、日本の経済のかなりの部分は海外との貿易で成り立っています。石油や天然ガスなどのエネルギー資源や様々な鉱物資源を海外から輸入し、それらをベースに、日用品を始め多種多様な製品を生産して海外に輸出し、外貨を稼ぎ、貿易黒字を出し続けることで、日本は資本主義の恩恵を受けながら何とか「先進国」の一員として生き延びています。この基本構造は明治の時代に確立しました。明治以来、日本は、「文明開化」や「殖産興業」の掛け声のもと、銀行を作り、会社を作り、工場を建て、その製品によって、人々の日常生活を支える一方、海外貿易に力を入れ、西洋から取り入れた新技術に独自の改良を加えて生産した諸々の製品を世界中に売ってきました。特に戦後は、自動車や家電製品、カメラや医療機器、機械工作機器、通信機器など、ありとあらゆる製品を海外に売りさばいて脅威の経済成長を遂げ、バブルがはじけた後の30年に及ぶ停滞にもかかわらず、今なお世界第三位の経済大国の地位を保っています。世界経済は日・米・欧の三極を中心に回っており、世界に通用する通貨も、基軸通貨の米ドルを中心に、ユーロと円がそれを支える形をとっています。

 これほど重要な意味を持つ日本の海外貿易の最前線で、日本製品の宣伝・販売に携わるのが海外展開する多くの会社のビジネスマンたちです。彼らは、新製品の良さを分かりやすく説明し、改良された機能や能力をアピールします。それが人間にどんな新たな可能性をもたらし、どのようなサービスを提供できるのか、海外の人たちに英語で説明し、熱っぽく論じることが求められます。そこで、今日は、そんな時にきっと役に立つ基本語彙について考えてみましょう。

 英語では、一般に可能性、すなわち「~ができる、可能である、あり得る」ということを表現するのに、「能力」(capability) と「可能性」(possiblity)と「蓋然性」(probability)「実現性」(feasibility)が問題になります。新製品のための企画であれ、販売方法であれ、ビジネスマンにとって、ありとあらゆる議論の中心になるのが、能力と可能性と蓋然性と実現性だからです。ビジネスマンは、これらの概念が頭をよぎるとき、議論の流れを瞬時に判断して、必要に応じていくつかの定番表現を当面の議論と嚙み合わせる必要があります。これらの語は次の例ように使い分けることが可能です。「人類が風力発電に関する技術や「能力」(capabilities)を、今後十年以内に飛躍的に向上させ、将来、世界中のすべての国の電気需要をカバーすることは「可能性」(possiblility)としては全くゼロではないにしても、その「蓋然性」(probability )は極めて低いと言わざるを得ない。それは、ほかならぬこの目標を十年以内に達成するための「実現性のある」(feasible)計画が、そもそも立て難いという現実があるからだ。」いかがでしょうか。

 この例からも推察できるように、ビジネスマンは、それらの定番的な議論に登場するいくつかの基本語の意味や使い方を、あらかじめしっかり学んでおかなければ、個々の場面で的確に使い分けるのは困難です。ですから、まずcapability とpossiblity の区別から始めるならば、これらの語が実際に使われうる場面をできるだけ具体的かつ明瞭に思い浮かべながら、鮮度の高い文例とともに、個々の語のニュアンスをくみ取っていくのが一番良い方法なのです。しかも、これらの語は、やや難しい語彙に属しますが、日常的に極めて頻繁に使われることも事実です。そこで、例文はできるだけ自然な会話から選び、それぞれの語の基本的なニュアンスの違いと使い分けを、豊富な事例から、浴びるように、そして肌感覚で覚えることが大切です。

 例えば、capability については私が考案した次の英文を見て下さい。

 I simply did not know that he was capable of doing such atrocities.

といえば、「彼にあれほどの残虐行為ができるとは考えもしませんでした。」という意味です。この場合のcapable は be capable of ~という慣用的なフレーズの一部として使うことが多く、何事かの遂行能力を表します。「~をやってのけることができる」というほどの意味です。(これに対して、He is an able man. と言えば、「彼は有能な人間です。」という意味で、ある人の人物評、もしくは一般能力への言及であり、 He is able to speak English. と言えば、「彼は英語を話すことができる。」という意味で、ある人が持つ特定の能力への言及です。)ほかにも、或るオックスフォード英英辞典からの引用ですが、

 I'm quite capable of taking care of myself.

と言えば、「自分の身の回りのことは十分自分でやれます。」という意味です。capable は able よりも一段ギアを挙げた表現であることを確認してください。capable は形容詞ですが、その名詞形はcapability です。この語は、個人や団体などが必要に応じて発揮することのできる「(意外な、または特記に値する)能力」を表します。例えば、the company's capability to increase productivity は、「その会社の生産力向上能力」という意味です。また、their nuclear weapons capability は、「彼らの核兵器(生産・管理・使用)能力」という意味です。この語は、事の成否や実現性に直結するポイントをズバリ表現する言葉ですから、議論を前に進める際に極めて重要な働きをします。

 これに対して、possible 或はpossibility はどのような意味を持っているのでしょうか。possible は一般に「可能性」への言及を担う言葉ですが、副詞形の possibly を使って、

 Could you possibly speak a little more slowly?

と言えば、「誠にすみませんがもう少しゆっくりお話しいただけないでしょうか?」というほどの意味です。possibly を please に変えて、

 Could you please speak a little more slowly?

と言えば、「できればもう少しゆっくり話していただきたいのですが。」というほどの意味です。どこがどう違うのでしょうか。丁寧さの度合いが少し減るのです。さらにplease も取りはらって、

 Could you speak a little more slowly?

と言えば、「もう少しゆっくり話してもらえませんか?」と言うほどの意味で、丁寧さの度合いはさらに減ります。さらに、could をwill に変えて、

 Will you please speak a little more slowly?

と言えば、ストレートに「もう少しゆっくり話してください。」と言うほどの意味です。 また、この文からplease も取り払って、

 Will you speak a little more slowly?

と言えば、「もっとゆっくり話してもらえません?」というくらいの意味となります。

 不思議なのは、possiblyが使われるとなぜこれほど丁寧な表現になるのか、ということです。それは、possible には任意のある事柄に関して、それが起こりうる極限の可能性という考え方が含まれるからです。例えば、私たちが宝くじを買って一億円が当たる確率は非常に低いですが、それよりさらに低い可能性であっても、少しでも可能性があれば、英語ではpossible(=あり得る)が堂々と使えるのです。もちろん、可能性が全くゼロなら、impossible (=あり得ない)と言います。トム・クルーズ主演の「ミッション・インポッシブル(mission impossible)」シリーズは、だれが見ても実現不可能としか思えない目標に向かって決死の挑戦をする男たちの物語です。

 つまり、possible には、単なる「可能性」を超えて「可能性のすべて」という意味合いが含まれます。ついでに言えば、possible は試験などの満点という意味でも使われるのです。こう言うわけで、possibly が疑問文の中で使われていたり、仮定法とともに使われていたりすると、相当の注意が必要です。これらの場合、「ひょっとして、(仮に万が一の可能性として、)~をして頂けないでしょうか?」という意味を相手に伝えることができるのです。「それをしていただければ、本当に幸いです。(私の常識ではあり得ないことですが。)」という思いが相手に届くのです。ちなみに、日本語では「有難い」は、文字通りの意味は「あることが難しい、ほどんどありえない」ですが、日本的な伝統の中では「ありがとう」という言葉となって感謝の意を伝える定番表現となっています。洋の東西を問わない、人間に共通の心理がうかがえます。

2.possibility とprobability の違い

 ところで、作家になる前の、英語教師だったころの夏目漱石が、ある教室で英語を教えていて、possiblity とprobability の違いを学生に説明しようとして、「自分が今君たちの目の前で逆立ちをして教室を一周するpossibility はあるが、probability はない。」と言ったそうです。漱石先生は必要なら逆立ちをするのにやぶさかではなかったはずですが、現実に彼がそうする可能性は、勿論、ほとんどありませんでした。漱石がこの二語の違いをどんなに正確に把握していたかを示す、面白くも秀逸なエピソードですね。

 もっと卑近な例を挙げてみましょう。例えば、あなたがデートをしようとして誘った相手が、Yes. と言えばデートはできます。しかし、相手が Possibly.  と言えば、「自分がデートの誘いに応じる可能性は極めて少ない」という意味です。事実上の断りです。ほかには、Perhaps. でも、言葉尻を濁した感じがありますが、「一昨日おいで」とか「おあいにく様」に近い語です。「ひょっとしたらありうる」という意味で使う語だからです。でも、もし相手が Probably. と言えば、かなり脈はあります。七、八割、実現の可能性があるときに使う言葉だからです。

3.probability とfeasibility の違い

    では、probability とfeasibility の違いはどこにあるのでしょうか。probability はある特定の出来事の起こる可能性について言及するときの言葉です。例えば、またオックスフォード英語辞典からの例文ですが、

 For a time revolution was a strong probability.

は「一時、革命がいまにも起こりそうだった。」という意味です。何かが起こる可能性が高い場合、それを強調する形容詞には、strong や high があります。

 一方、feasibilityはある企画や計画の実現可能性について言及するときの言葉です。よく使われるのは形容詞形の feasible で、所与の取り組みの実現可能性、目標の達成可能性などが、大真面目に、あるいは客観的に、論じられるときに使われる言葉です。やはり、オックスフォード英語辞典からの例文ですが、It’s just not feasible to manage the business on a part-time basis.と言えば、「パートタイマー(派遣労働者)たちを中心にした経営では、とてもこの事業は成り立っていかない。」という意味です。また、I doubt the feasibility of the plan. は「その計画の実現性を私は疑う。」という意味です。

 It is probable that ~.という構文は、「~である可能性が相当高い。」とか「多分~である。」という意味で使われます。例えば、It is probable that it will rain tomorrow. は「明日はたぶん雨になるだろう。」というほどの意味です。

4.他の類義語:practicable とworkable とviable について

 一方、practicable という形容詞は「実行可能な」という意味を持ち、例えば

 The only practicable  alternative is to postpone the meeting.

は「ただ一つの実行可能な代替案は会議を延期することです。」という意味です。また、at the earliest practicable opportunity は「実行可能なできるだけ早い機会に」という意味です。また、practicable の名詞形はpracticablity で feasibility と同じ意味で使うことができます。そこで、We were doubtful about the practicabilty of the plan. と言えば、「私たちはその計画の実効性に疑問を抱いていた。」という意味です。また、workable は practical と同じ意味で使うことができます。a workable plan と言えば、「実行可能な計画」という意味です。practical は「実際的な、現実的な、実践的な」という意味で、theoritical (「理論的な、理論上の」と対立する言葉です。

 ただし、feasible と言うときには、計画なら計画の実質的な実効性と同時に、当初の目的の達成が見込まれることが、半ば前提になっています。practical の場合は、目的の達成は必ずしも前提にはなっていなくて、実効性そのものに焦点が当たっています。また、viable という言葉も時々使われますが、これは生存可能性と言う生物学用語でもあり、他方で比喩的に、計画の実効性に近い意味で使われることもあります。この場合、計画が実行性を持ち、着々と効果を上げ、成果が期待できるときにしか使われません。結果重視の言葉なのです。また、workable についても、より細かいニュアンスを言えば、何かのシステムや方針や手法についていう言葉で、それらの機能性、意味のある作業の可能性、について言及します。作業が作業として成り立つかどうか、すなわち効果が期待できるかどうかに重点が置かれます。

 

 

 

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