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英語母音攻略法:二つの「イ」音について

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英語母音攻略法:二つの「イ」音について

英語母音攻略法:二つの「イ」音について

2022/04/14

英語母音の全体像

英語母音はいくつあるの?

1.英語母音を制するものは英語を制する、って?

 英語が思うようにすらすらと話せないことを苦にしている人で、その理由もしくは原因を自分で正確に把握している人は、意外と少ないかもしれません。もちろん、日本人にとって英語は外国語ですから、話すのが少々難しくても当たり前なのですが、「それにしても」という思いのある方もきっと沢山いらっしゃるはずです。そこで思い当たる理由は何でしょうか。難しい単語の知識でしょうか。確かに相当数の単語を知っていないと実のある話は出来ません。相手の英語が聞き取れない大きな原因にもなります。また、英語の文法もよく分かっていないと、意味の通じる文にして発話することが難しいでしょう。でも、英語が通じにくいもう一つの明白な原因は英語の独特の音にあります。それらの発音が難しいのです。例えば、l や  r、sh や th の音が難しいことはよく知られています。しかし、英語の母音も実は難しいのです。そこで今日は英語の母音に焦点を当ててお話をしてみたいと思います。まず英語の母音の全体像について、私の見方を述べたあと、英語の二種類の「イ」音と、その区別の仕方について説明します。

 英語を学ぶ日本人にとって英語母音一般が持っている重要性は、残念ながら、日本の公教育では十分に認識されているとは言えません。もちろん、良心的な英語教師によって、特定の母音に払われるべき注意が喚起されます。例えば、cat やapple の"a" の発音の重要性は、多くの人によく知られています。申し上げるまでもなく、発音記号では /æ/が使われます。また、鳥のことを bird と書き、発音は /bə:d/ 若しくは/bə:rd/(アメリカ発音)だと教えられます。でも、もし/bə:d/ ではなく、/bɑ:d/ と発音したら( /ɑ:/ は口を大きく開け、喉の奥で声を出します)、その音は英語をしゃべる人たちの間では、bard(吟遊詩人)としか認識されません。

 そんな難しい語を中学生に教えてどうするのだ、という批判がすぐに返ってくるのは覚悟していますが、そこまで厳しく釘を刺さないと、発音の本当の重要性は分かってもらえません。正しい発音を教えたのだから十分じゃないか、では済まされないのです。

 ところで、英語を学んでいるほとんどの日本人を、突然、途方に暮れさせるものって何か、ご存じですか?それは例えば、ハリウッド映画の中で普通に飛び交う英語、あの全く予測不能な、どこから打ち込まれてくるかわからない、変幻自在な英語の弾幕です。その英語は、時には、比較的穏やかで、聞き取りやすいのですが、場面が変わると、途端に激しく機関銃のように炸裂します。それは、英語の言葉、言葉、言葉の衝撃、いや襲撃、となって私たちを襲います。

 それに、そもそも、なぜあんなに早口でしゃべれるのでしょうか?何がそれを可能にしているのでしょうか?それこそ実は母音なのです。何故そう言えるのか、ですか?英語の母音は、第一、いくらでも伸び縮みします。え、それって、何故ですか?英語には強勢アクセントというものがあるからです。強勢アクセント?それって、何ですか?それは二音節以上の単語、つまり多音節語には、必ず出現するものです。英語の多音節語は、いずれかの音節を、他の音節より強く発音しなければならない、という決まりがあるからです。どの音節が強いかは、単語によって変わります。例えば、-tion で終わる語は、そのすぐ前の音節に強勢アクセントが来る、という法則はよく知られています。例えば、civilize は「文明化する」という意味の動詞で、 ci-vi-lize と三音節に分節化され、ci にアクセントが置かれますが、その名詞形である civilization は ci--vi-li-za-tion と五音節に分節化され、-za にアクセントが移ります。他にも、-ity で終わる語も、その直前の音節にアクセントが移ります。例えば、mental は「精神の」という意味の形容詞で、men-tal と分節され、men にアクセントが置かれますが、「精神性」という意味の名詞 mentality は、men-ta-li-ty と区切れ、第二音節の -ta にアクセントが移ります。同様に、 universal は「普遍的な」という意味の形容詞で、uni-ver-sal と区切れ、アクセントは第二音節の -ver にありますが、「普遍性」という意味の名詞 universality は、uni-ver-sa-li-ty と区切れ、第三音節の -saにアクセントが移ります。また、prior (=優先度が高い)は pri-or と区切れてpri に置かれていたアクセントは、名詞の priority (=優先順位)では pri-o-ri-ty と区切れ、アクセントは -o に移ります。総じて、スペリングと発音、並びにアクセントの関係は実際は興味深い関連が沢山あるのですが、お勧めは、何千とある基本語について、アクセントの位置を辞書で確かめながら、正しく覚えることです。

 話を元に戻しましょう。二音節以上の単語には必ず一つ、アクセントのある音節がある、ということでした。アクセントとは強勢アクセントのことです。例えば、facilities(=施設) は fa-ci-li-ties というように四つの音節に区切れますが、このうち第二音節、すなわち-ci が、他の音節より強く発音されます。

 さて、-ci という綴りに対応する音節が、 fa や li やties という綴りに対応する音節より、強く発音されると、その影響を受けて、facilities という単語全体に何か変化が起こるのでしょうか?

 しかし、ここでひとつ大事なことを付け加えなければなりません。

 実は-ci(この音節の発音を発音記号で示すと /si/です。)は、その音節に含まれる母音 /i/が、他の音節に含まれる母音より「強」く発音されるだけでなく、他の音節に含まれる母音より若干「長く」発音されるのです。つまり、一般的に、強勢のある音節は、同一単語内の、他の音節より強く発音されるだけでなく、少しだけ長く発音されるのです。言い換えれば、アクセントのある音節の母音は、アクセントの無い音節の母音に比べて強大化するのです。

 ということは、全体的にはどうなるのでしょうか?

 全体的に見ると、アクセントのある音節を除いて、他の音節は相対的に弱小化するのです。つまり、英語の単語は、多音節語である限り、一つ、もしくはそれ以上の数の弱音節と、一個の強音節の組み合わせになるのです。

 英語では大部分の単語は二つ以上の音節を持っています。すると、英語は、全体として、ところどころに強い音節が出現し、他を圧して飛び跳ね、あたりに睨みを利かします。すると、その他の音節は小さくなり、比較的狭いスペースを共有しながら、ひたすら己の弱さ、小ささを嘆きながら、身を寄せ合うことになります。

 つまり、まるでゴム紐のように、話し手の感情のリズムに合わせて、伸縮自在に、引っ張れたり縮んだりを繰り返しているのが英語なのです。感情が穏やかで、全体のリズムもゆったりしているときは、英語も、穏やかで優しい印象を与えますが、何かがきっかけで暴れ出すと手が付けられなくなるのも、この弾力に由来します。そしてこれが、私たちが英語に対して抱きがちな強烈な印象、あの猛烈なスピード感と驀進力の源なのです。

 アクセントのある幾つかの音節は、その音節だけ、突出して理不尽にも強大化し、あたりを睨んで威張り散らす一方、他の大多数の音節は、狭い空間に申し訳なさそうに身を寄せ合い、犇めきあって、全体として、スピードを上げながら突進する機関車(ローコモーション)をイメージしてみてください。他方、日本語は、日本語を構成するどの語の、どの音節も、全く同じ長さ、同じ大きさで、優劣の差なく、きれいに水平に、整然と並んで、慌てず騒がず、犇めくこともなく、穏やかに発音されます。ここにあるのは、異なる幾つかの子音と、異なる五個の母音の組み合わせからなる、同じ長さ、同じ大きさの、粒ぞろいの音の、寸分の狂いもない規則的継起です。この永遠不変の原則が、未来永劫、無始無終に貫徹しているのが日本語です。両言語間のこの途方もない構造差こそが、日本人の抱きがちな、恐怖にも似た英語観となって表れているのです。

 英語が分からないとすれば、それはどこかに原因があります。発音もその一つかもしれません。では、英語の発音を、この際きちんと学びたい人は、どうすればよいのでしょうか?お勧めは、まず、母音を一つ一つ正確に覚えることです。どの母音も手を抜かずに、です。なぜなら、使う単語次第で、どの母音もアクセントが置かれる可能性がある反面、どの母音もアクセントが置かれない可能性があるからです。しかも母音の数は驚くほど多いのです。

 え、英語の母音の数って、日本語の母音の数より多いんですか? 日本語の母音は「あ」「い「」「う」「え」「お」の五つだけど、英語も同じじゃなかったんですか?そうではありません。英語の母音は少なくとも10個あります。実は、言語学者でない限り、真剣に、英語の母音の数を数えた人もいないし、真剣にその数を学者に尋ねた人もいません。日頃英語の母音に注意しない人は、その数にも関心がなく、母音の種類も、その特殊性もよく知らないのです。しかし、母音の数は比較的簡単に特定することができます。英和辞典などに記載されている発音記号を見れば、ほぼ正確な数(概数)を把握することができるかるからでです。

 それなら数えてみましょう。 

2.英語母音の数

 標準的な辞書に記載されている英語の母音は次の12個です。

   1. /æ/    bag, cat, hat, at, hand など。

 2. /e/     pen, head, said, ten, red など。

    3. /a/     fine, kind, I, tie, my, high など。

 4. /ʌ/     sun, come, month, cut, luck  など。

 5. /ə/     a, about, bird, girl, fir, nurse など。

 6. /ɑ/    park, car, art, heart, father  など。

 7. /ɔ/    god, hot, lot, dog, clock, pocket  など。

 8. /o/    coat, soap, hope, folk,  so  など。

 9. /u/    book, look, good, pull, hook  など。

 10. /u:/   fool, food, cool, moon, tune, cute  など。

 11. /i/     kid, him, it, lip, hint, sit  など。

 12. /i:/    sea, keep, meet, meat, seat, see  など。

 現行の幾つかの英語辞典から拾った英語母音の数は、ここに見るように12個ですが、英語学習の観点から見れば、この数自体にそれほど大きな意味はありません。アメリカ英語とイギリス英語では母音の種類に若干の違いがあり、記載される記号にも変化があります。例えば、fast (=早い、早く)はイギリス英語では/fa:st/ と発音され、アメリカ英語では /fæst/ と発音されます。また、/a/も/o/も、英語では単独では存在せず、/ai/(例えば sight、ice)や /au/ (例えば out、how)、あるいは/ou/(例えば、coat、folk)など、いずれも二重母音の中でだけ使われます。もし、単独で使われない母音は母音に数えない、というルールを課せば、母音の数は10個になります。ここでは、多くの英語で使われている母音の発音記号の数をすべて勘定に入れる、というルールに従っています。ただし、オックスフォードから出ている英語辞典では、/e/ と/ε/ を区別します。二重母音の/ei/には /e/ を使い、単独の語、例えば head には/hεd/と /ε/ を使うのです。これを加えると、英語母音の総数は13になります。

3. 二種類の「イ」について

 さて、もう一度上の一覧表をご覧ください。何か気づかれたことはありませんか。9番と10番、また11番と12番は、それぞれ/u/ および /i/ が記載されています。記号は二種類なのに、発音の種類としては四つと勘定されていますね。なぜでしょう。よく見れば分かる通り、音を延ばす記号 /:/(コロン)がついているかいないかの違いしかありません。実は、この場合の /:/ は単に音が延びるのではないのです。むしろ音の質が異なることを表しているのです。え、そんなこと、学校では教えてもらわなかった。学校では絶対に教えません。本格的に発音記号を教えること自体、まずありえないのです。繰り返しますが、学校は発音には一切かかわりません。発音は、日本では、英語の先生ではなく、ALT(Assistant Language Teacher)に任せています。分業です。ついでに言えば、この問題に関する限り、ALTの存在効果も極めて限定的です。なぜなら、ALT はまさか日本人が英語で区別される二つの「イ」について知らないとは夢にも思いません。一方、まさか英語には「イ」が二つある、などとは夢にも思わないのが日本人です。お分かりですね。きれいにすれ違うのです。交わりません。ですから、日本のALTは「イ」の音の教育に関する限り、残念ながら、何の役にも立たないのです。

 それではこの二つの「イ」はどのように異なるのでしょうか。まず、/:/ の記号のない方の /i/が使われる例を見てみましょう。事例は無数に多くあります。sin(罪)、sink(流し)、sing(歌う)、disk(ディスク)、dim(ぼんやりした)、digital(デジタル)、rich(金持ちの)、risk(危険)、ribbon(リボン)、kiss(キス)、kid(子供)、kin(親戚)、hit(ヒット)、hip(お尻)、hill(丘)などが/:/を伴わない /i/ の音で発音されます。

 では /i:/の発音はどのような語に使われるのでしょうか。これも実に多いです。seek(探索する)、season(季節)、deep(深い)、dean(学部長)、sleep(眠る)、leap(跳ねる)、keep(守る)、speak(しゃべる)、means(手段)、meet(出会う)、meat(肉)、reach(届く)、heat(熱)、peak(頂点)などが/i:/の音を含みます。

 面白いのは、一つの単語の中に/i/ も/i:/ も存在するものがあります。indeed, repeat, receive, believe, retrieve, relieve, recede などです。

 では、両者は実際にはどのように区別して発音されるのでしょうか。/i/は短く、緩んだ「イ」と覚えます。鋭い「イ」ではなく、口の周りから力を抜いて、穏やかに、柔らかく発音します。それに対して、/i:/は鋭く、長めに発音します。ただし、本当は、母音の長さとは無関係に、上歯と下歯の間の開きをやや大きく取るのが/i/で、反対に、ぐっと狭めるのが/i:/という違いがある、というのが両者の本質的な違いであり、区別の仕方なのです。ですから、むしろ「エ」に近い、緩めの「イ」が/i/の音で、反対に、上歯と下歯の間を狭く保ちつつ、唇を左右にぐっと引いて、思い切り鋭く長めに「イ」を言うのが、/i:/の音です。

 次は練習問題です。

1.次の短い文を正確に発音しましょう。

  a.   Eat it swiftly with ease.

        b.   Please sit down on your seat.

        c.   You can leave your message here.

        d.   I feel sick, I think I need your assistance.

        e.   He hit me hard and I bleed, I must see a doctor quickly.

  f.   Believe me, this is my first visit here to see my sister. 

2.次のペアー音を正確に区別して発音しましょう。

  a.   hit       heat   

        b.   sit      seat

        c.   sick     seek

        d.   fill       feel

        e.    hill      heel

        f.    lid       lead

        g.    bit      beat 

        h.    kin     keen 

        i.     slip     sleep

        j.     pick    peak  

 

 

        

 

 

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