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メジャースプーンとメジャーリーグの発音の難しさについて学ぶ

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measure とmajor の正しい発音

measure と major の正しい発音

2021/12/16

measure  とmajor の正しい発音

メジャースプーンとメジャーリーグの発音の正しい区別

 1.英語の「ジ」は二種類ある

 日本人が間違えやすい英語の発音の中に、片仮名ではどちらも「メジャー」と表記される、二つの音があります。一つは、メジャースプーン(measure spoon=計量スプーン)のメジャー、もう一つはメジャーリーグ(Major League)のメジャーです。このように、英語の measure とmajor は、片仮名だといずれもメジャーと表記されるため、多くの日本人はこの二つの発音が異なるとは夢にも思わないのです。しかし、この二つは、意味とスペリングが異なるだけでなく、発音もはっきり異なるのです。

 となれば、問題は、なぜ片仮名では両者の発音の違いを区別できないのか、その理由を知ること、そして、問題の在りかを知ったうえで、どうすれば正しい発音を獲得できるか、その手段を明らかにすることです。もっとも、ここで、より細かいことを先に言っておくなら、measure の mea-は「メ」ですが、major の ma-は「メイ」の方がより英語の発音に近いのです。したがって、メジャーリーグを、メイジャーリーグと言えば、両者の違いはかなり正確に区別できるでしょう。ただし、両者の発音の決定的な違いは、前半の「メ」もしくは「メイ」にあるのではなく、むしろ、後半の「ジャー」に存在します。何故なら、この二つの「ジャー」の中には、二つの異なる「ジ」が含まれているからです。

 そこで、この二つの異なる「ジ」を分かりやすく区別するために、メジャーリーグで使われるmajorの「ジ」を「ジA」、メジャースプーンで使われるmeasureの「ジ」を「ジB」と呼ぶことにします。

 2.「ジA」

 「ジA」は、アルファベットの "j" が使われる語によく出てきます。例えば、jeep(ジープ)、James(ジェームズ)、jesture(ジェスチャー、身振り)、 ajust(調整する、アジャスト)、judge(審判する、審判、ジャッジ)、Jesus(イエス、ジーザス)、Japan(日本、ジャパン)、job(仕事、ジョブ)、joke(冗談、ジョーク)、joker(ジョーカー)、enjoy(楽しむ、エンジョイ)、journalist(ジャーナリスト、新聞記者)、major(より大きな、主流の、専攻、メジャーな)などがあります。

 「ジA」は、このほか、アルファベットの "g" が使われる語にも、かなりの頻度で使われます。例えば、general(一般的な、将軍)、generalist(ジェネラリスト)、gentleman(紳士、ジェントルマン)、gene(遺伝子、ジーン)、fragile(脆い)、energy(エネルギー)、engine(エンジン) 、 large(大きな)などがそうです。

 ただし、 "g" は/g/の音で非常に良く出現します。gather(集める)、game(ゲーム)、gass(ガス)、get(手に入れる)、guest(客)、guess(推測する)、good(善良な、良い、グッド)、go(行く、ゴー)、golf(ゴルフ)、great(大きな、素晴らしい)、again(再び)、mug(マグ)などがそうです。

 3.「ジB」

 他方、「ジB」は、アルファベットの "s"に 応する音として出現します。例えば、leisure(暇、レジャー)、pleasure(悦び)、measure(物差し、メジャー)、treasure(宝、財宝、トレジャー)、closure(閉鎖、閉店、締め切り)、disclosure(暴露、発覚、開示)、exposure(露見、摘発、野ざらし)などがそうです。珍しく"z"に対応する例としては、azure(紺碧) があります。

 ただし、 "s" は、/s/や/z/の音に対応するのが普通です。例えば、school(学校)、sun(太陽)、say(言う)、speak(話す)、sports(スポーツ)、society(社会)、same(同じ)、sick(病気の、気分が悪い)、sense(感覚、良識)、sign(署名、サイン)、ascribe(~のせいにする)など、沢山あります。また、"s"を/z/と発音する 例としては、James(ジェームズ)、Japanese(日本の、日本人)、recognise(認める、認識する)、these(これらの)、his(彼の)、lens(レンズ)、propose(提案する、求婚する)、position(地位、位置)resurrection(復活)などがあります。

 4.「ジA」と「ジB」の発音記号分析

 では、二種類の「ジ」の発音の違いを、正確に理解するために、発音記号で比較してみましょう。「ジA」と「ジB」の発音記号は、それぞれ、/ʤ / と/ʒ /です。両者を比べると分かるように、「ジA」は /d/と /ʒ /との合成であり、破裂音 /d/ が「連続性子音」の/ʒ /に先行しています。他方、「ジB」は単独の/ʒ/です。

 ところで、/d/は/t/の有声音です。言い換えれば、/d/は/t/の「兄弟音」もしくは「ペアー音」です。「兄弟音」というのは二つの音が瓜二つのように似ている場合を指します。「ペアー音」というのは、英語の発音を学ぶ際の科学的手順にかかわる名称です。つまり、一個の音を新たに学ぶと、それと兄弟の関係にある音を、併せて学ぶことで、身体への記憶の定着を促進し、音を分類することで、英語の音への理解を広げることができます。例えば、/b/と/p/や、/v/と/f/、また、/g/と/k/なども、互いに「兄弟音」であり、「ペアー音」です。

 面白いのは、/ʤ/は/tʃ/の「兄弟音」であり、「ペアー音」であるということです。すなわち、後者を有声化すれば、前者が得られる、という関係にあります。そして、後者は、日本語では、「ち」または「チ」を充てればほぼ完ぺきに英語の発音になります。しかし、不思議なことに、「ち」の濁音は存在しません。「ち」の濁音の代わりをするのが「じ」です。日本語では、濁音の「ザ行」と「ダ行」が「い」の段で交錯しています。「ズィ」、すなわち、/zi/の代りに、「ジ」、すなわち、/ʤi/ が用いられているのです。英語では、例えば、jar,  blizard,  pleasure の三つは、j"と"z"と"s"とが、それぞれ/ʤ/と/z/と/ʒ/の音と対応しています。

 ところで、/ʒ/は、shの音、すなわち /ʃ /のペアー音(=兄弟音)す。つまり、sh の音を有声化すると、/ʒ/の音が得られます。したがって、この音をマスターするには、その前に sh の音をマスターするのが物事の順序なのです。

 そこで、 sh の音の出し方を確認しておきます。sh の音は、まず、ひょっとこの様に、舌の先を少しとがらせ、同時に口をすぼめ、硬口蓋と上の歯との中間に狙いを定めて舌を伸ばし、硬口蓋の手前で止め、その位置で、舌の姿勢をそのまま保持します。次に、その舌を囲むようにして、息を吐き、その息が舌の上部を伝って、勢いよく外に出るようにします。その際、舌の前半分と硬口蓋の間で、シューと、こすれるような音を出します。日本語の「し」の場合、舌先が下の前歯の裏にピタッとくっつくのに対して、英語の/ʃ/の場合は、舌全体が、口の中のどこにも触れない状態を維持しつつ、こすれるような音を出し続けます。かくして、この音は、私の言う「連続性子音」の特徴を備えるに至ります。一方、/ʒ /は /ʃ/ の有声の「兄弟音」ですから、/ʒ /もまた、立派な「連続性子音」です。

 ここからわかることは、「ジA」が、破裂音とぴったりくっついた/ʒ /であり、それ故、連続性を持ちえないのに対して、「ジB」は、単独の子音であり、破裂音/d/ から独立しているため、本来の「連続性」を、いつでも発揮することができます。すなわち、sh の音の出し方で触れたように、「舌全体が、口の中のどこにも触れていない状態を維持しつつ、こすれるような音をコンスタントに出し続ける」ことで、「ジB」本来の音を出すことができるのです。

一方、日本語の「ジ」は、「ジA」 の音であり、発音記号で示すならば、破裂音 /d/ が先行する/ʤ/ なのです。そして、日本語には、元々、「ジB」、すなわち/ʒ /は存在しません。日本語の「し」が、もし正確に /ʃ / に対応していれば、その濁音としての「じ」が 、自然に、「ジB」に対応していたかもしれません。上に見たように、破裂子音の/d/が加わって、/ʤ/となっています。したがって、日本語の発音体系からは、「ジB」、すなわち、/ʒ/に到達する道は閉ざされています。日本人に残された唯一の手段は、すでに紹介した/ʃ/ の発音訓練を経て、それを有声化した/ʒ /の音を自分の中で確立し、完全にマスターするという方法です。

5.もう一つの「ジ」について

 ショルダーバッグには多くの場合、ジッパーがついています。ジッパーは財布や、防寒具の上着にもついていますし、ズボンにもついていることがあります。ところが、ジッパーに使われている「ジ」は、/ʤi/ でも/ʒi/でもなく、/zi/です。ジッパーは、英語ではzipper と綴り、発音は、/zipə/ です。他にも、zinc(錫)が/zi/を含みます。そして、/zi/は/si/の「兄弟音」であり、両者は「ペアー音」でもあります。

6.訓練のメリット 

 これまでの説明でを読まれても、実際にはどのような語に特に注意すべきかよくわからない、とおっしゃる方には、次の例を示しておきましょう。例えば、何かちょっとした親切を誰かにしてあげて、相手から感謝されたとき、Don't mention it. とか、My pleasure. などと返事をします。後者の場合、発音を片仮名表記すると、「マイプレジャー」となります。でも、この「ジ」を日本式に、「ジA」の 音で発音すると、ネイティブの英語話者には、 My pledger. としか聞こえません。それは「我が質権設定者」という意味です。逆に「ジB」、すなわち、/ʒ/  を、それが持つ「連続性子音」の特性を生かして発音することができれば、日ごろ発音に厳しいネイティブの英語話者も、きっと目を細めて、あなたの発音を誉めるかもしれません。そこまで正しくこの子音の発音ができる日本人は、帰国子女や通訳など、限られた人々を除いて、ほぼ皆無だからです。

 

 

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