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統語法って、何?

統語法って、何?

2021/08/24

英語における統語法の意味

英語の統語原理について

1. 統語法は意味を生成する暗号である

英語学習者の英作文の力を試す方法として、普通の和文英訳問題の他に、ばらばらに提示された単語を正しく並べて、あらかじめ示された日本文と同じ意味になるようにする問題があります。例えば、「岐阜市の人口はおよそ40万人です。」という日本文をまず与え、次に、[ of, the, is, Gifu city, population, 400,000, about] を与えるのです。後者は、ばらばらの状態の語群です。この問題は、語彙力を含めて、英作文の力を総合的に試すというよりも、すでにある基準で選ばれた、しかし、ばらばらの語群を、あらかじめ提示されている日本文と同じ意味になるように、正しく並べ替える問題、言い換えれば、正しい語順を見つけさせる問題です。そして、この正しい語順の問題は、英文法では、統語法に属します。

このような単純な問題であれば、誰でも正解は得られるかもしれません。中学生の英語力で十分かもしれません。けれども、数字ページの短編小説であれば、単語の数は数千から数万に及ぶかもしれません。それだけの数の単語がばらばらに並べられていたら、その短編小説を、原文を見ないで復元することは不可能です。いくら統語法を知っていても、丸出ても足も出ないのです。何故でしょうか。それは勿論、文が複数になり、登場人物がもしかしたら複数いたり、物語が予想できない展開をするかもしれないからです。

しかし、不思議なのは、たった一文、それも10語くらいからなる短い文であっても、単語の並べ方がばらばらなら、意味を成しません。ただ、多分こういうことを言いたいのかな、という見当はつく、ということです。まして、日本文が与えられていれば,精度はぐんと上がります。でも、それはどういうことでしょう。いくつかのヒントが存在するからです。大きなヒントは、これらの7個の語の中で、動詞は is だけ、しかもそれは be 動詞の三人称だ、ということです。つまり、この文は、A=Bの文型が使える、ということです。主語と補語を決めることが出来さえすれば、主語+be動詞+補語、という構文を使って日本文に対応する英文を作ることができる、ということを誰でも知っているからです。

英作文の力を試す方法としては、もっと普通の、和文英訳という方法があります。つぎの日本文を英訳しなさい、と言って、「岐阜市の人口はおよそ40万人です。」を示せばよいのです。その時、解答はどうなるでしょうか。正解は勿論、1. The population of Gifu city is about 400,000. でよいのですが、このほかにも、2. Gifu city has a population of about 400,000. とか、3. About 400,000 people live in Gifu city. などの別解が考えられます。これらは、いずれも正解です。ただし、意味のニュアンスはそれぞれ違います。1の文は、岐阜市についていろいろ情報を探していて、人口についてはこれこれだ、と言っている感じがします。2の文は、例えば、都市別の感染者数の割合を出そうとして、岐阜市の人口をまず確認している、といった状況が想定されます。3 の文では、例えば、大垣市と比べて、およそ四倍の人が岐阜市には住んでいるので、今回の建て替えられた新庁舎のこの大きさも納得できる、といった状況での物言いにも聞こえます。すべてニュアンスの問題であって、これらの文の間には、それ自体で、正しい英文か、間違った英文かの区別は存在しません。文法的には、いずれも等しく正しいのです。唯一、何らかの区別が存在しうるとすれば、それが使われた際の現実にどれだけ適合しているか、の度合い、言い換えれば、ぴったり合った英語か、それとも、少しピントの外れた英語であるか、の区別くらいです。何となく、とか、これはやや変、くらいの緩い判断基準で分けられるのです。

いわゆる並べ替え問題は、一見単純に見えますが、英語の重要な一面を垣間見させてくれます。それは、ある語群が与えられたとき、正しい語順は一通りしか存在しない、という事実です。また、日本文においても、同じように、ある特定の語群が与えられたときには、正しい語順は一通りしかありません。

2.文型と語順

しかし、英語学習者の視点から見た場合、上に見た日本文に対応する、いずれの形の英文を選ぶにせよ、意味の通じない語順だけは避けなければなりません。学習者が追及すべきは、どのようなシチュエーションに置かれても、その場に最適な英文を、自動的に発信することのできる英語力です。文型的には、1 の文は第二文型、2 の文は第三文型、3 の文は第一文型です。もちろん、このような区別も、普段は意識されません。ただ、状況に合わせて、最適の英文が自動的に浮かんでくるだけです。しかし、その段階に達する前に、英語学習者には、どの文型にも通暁していてもらう必要があります。選ぶ文型の数が限られていては、例えば、目隠しをして、あるいは、利き腕を封印して、試合に臨まされるボクサーにも似て、勝てる試合も勝てない恐れが出てきます。となると、上記の語順整序問題は、実は第二文型の知識を問う問題でもあり得たわけです。そして、第二文型は、第三文型と並んで、文型の両雄と言ってよい存在です。それは余りにもよく使われる文型なので、「第二文型を封印して一日過ごしてください」と言われた英語のネイティブスピーカーは、それならいっそ何も言うな、と言われた方がましだ、とさえ感じるはずです。

もうお分かりのように、五文型は統語法の要の位置にあります。なぜなら、主語+動詞を基本とする、文の五つのパターンは、それに目的語と補語を加えて四つの「文の要素」で出来上がっているからです。そして、肝心なのは、これらの要素は、でたらめの語順で並べられるのではなく、それぞれの文型の構成原理そのものになっていることです。S, V, O, C の記号で示すことの多い、この五文型は、そのまま語順の原理を示しているのです。文型=語順、という文法原理を再確認する必要があります。1. The cat killed the mouse. は 2. The mouse killd the cat. と意味が逆転します。1 は「その猫はそのハツカネズミを殺した」ですが、2 は「そのハツカネズミはその猫を殺した」という意味で、何が何を殺したかは、主語の指定席、すなわち文頭、に何を置くか、で決まります。そして第三文型では、SVO の順番そのままに、主語(S)が先頭に、目的語(O)が一番後ろに置かれます。ところが日本語では奇妙なことが起こります。例えば、「そのハツカネズミその猫殺した」とすれば、前者の意味とほぼ等しくなるのは、日本語では助詞「は」や「が」を上手に使うことで、意味を変えずに語順を入れ替えることができることを示しています。しかし、英語ではSVOの語順は絶対です。言い換えれば、英語の語順は、それを動かせば、意味が逆転することもある、厳しい掟でもあるのです。

3.統語法と五文型の違い

もちろん、統語法と五文型はイコールではありません。統語法は五文型よりも守備範囲が広いからです。例えば、「あ、それ知ってる。」を英語で言えば、1. Oh, that I know. となります。(目的語+主語+動詞という語順になっているのを確認してください。)これに対して、「そんなの知ってるよ。」は、2. I know that. と普通の語順で言います。1 は倒置の例です。何か特に強調したいことがあれば、それを主語や動詞よりも前に持ってくることで、表現する方法です。このように、倒置は、何かを強調するために主語と動詞の位置を逆転させる修辞法の一種ですが、同時に、疑問文を作る原理としても使われます。例えば、Is the population of Gifu city about 400,000? と言えば、「岐阜市に人口はおよそ40万人ですか。」という疑問文になります。be動詞の is が文頭に移動し、主語の the population of gifu city は、be 動詞の後に置かれています。ここで大切なことは、このように、便宜的に施された位置の変更によって、その文の文型までがが変わるわけではないということです。

他にも、語順を変えることで特定の効果を得ようとする手法の一つに、強調構文があります。強調構文では、It is ~that ~という決まった枠組みが使われ、強調したい箇所を、 It is ~ that という枠の「 ~」 の部分に持ってきて、次の that との間にサンドイッチ状に挟むのです。例えば、I met him in New York last year. は、It was in New York that I met him last year. と言い換えれば、in New York の部分が協調され、「僕は昨年ニューヨークで彼に会った。」が「僕が昨年彼に会ったのはニューヨークだった。」に変わります。これも一種の倒置ですが、このようになっても、文の文型までが変わるわけではなく、ただ、強調のために、ある部分が別の場所に移動させられるだけです。しかし、この移動は、統語法的には意味のある移動です。すなわち、語順を変えることによって、ある個所を強調することができるからです。

4.英語学習の三つの分野

さて、問題は、統語法が、英文法の要の位置にあり、それゆえ、最重要学習ポイントだ、ということです。しかし、何故そこまで言い切れるかは、他の学習ポイントと比較しなければ、必ずしも明瞭に意識されないかも知れません。そこで、統語法の位置を、英語学習の達成目標群の全体的俯瞰図の中で説明するのが分かりよいと思います。私は、英語学習の達成目標の全体を、英語の学習を支える三本の柱に見立てます。一番目は発音であり、二つ目は文法であり、三つめは語彙です。そしてこの三つの柱は、それぞれ、入ってゆく扉の異なる、英語達成目標です。はじめに、それぞれの違いを説明しておきましょう。

A. 発音 人間も動物も声を出すことのできる点では同じですが、異なる語を、異なる音素を使って使い分けることができるのは人間だけです。日本語と英語とでは、語を弁別するための基本の音素が、ほとんど重なりません。同じ発音の存在はゼロではありませんが、極めて少ないのです。子音も母音も、互いに、微妙に違ったり、互いに、相当大きく異なったりします。英語学習の観点から問題なのは、それを正しく発音しなければ、英語として通用しない、コミュニケーションの鍵となる音の数が、一つや二つに留まらない、ということです。特に難しいのは、日本語になく、それゆえ日本人が区別するのが極めて難しい、/l/と/r/、/f/ と/v/などですが、これらは、ペアーにして、その違いを、対照的に、きちんと耳と口で学んでいただく必要のある音です。次に、日本語に無いいくつもの母音、そしてこれまた日本語に無い、二重母音や三重母音の発音を、実際の口の開け方、舌の運び、息の出し方などともに、発音ドリルの中で、身体的に覚えていただかなくてはなりません。そして、もう一つ大切な発音訓練があります。それは、子音止めの語(milk, bird, pen, school, hat など) を正しく発音できるようになるための訓練です。例えば、cat は /t/ の音で終わりますが、日本人は、/t/ の音を単独で発音したことがありません。つまり、/ta/、/tʃi/、/tsu/、/te/、/to/ という五種類の音の一部としてしか、/t/ の音を出すことができないのです。同様に、そして全く同じ理由で、/d/、/k/、/g/ 、/l/、/p/、/m/、/n/、/s/ も、単独で発音するための訓練が必要です。それをしないと、これらの音で終わる多くの語、例えば、good, desk, king, pool, sleep, room, spoon, loss, などの発音を、それぞれの子音で止めて、終わらせることができないのです。さらに、このほかにも、日本語にはない音があります。それは、発音記号で示すなら、/ʃ/、/ʒ/、/ʤ/、/ð/の音です。これらの音の出し方を、実際に声を出して学び、インストラクターのチェックを受けて、必要なら修正してもらい、続いてそれらを含む、she、measure、hedge、mother などの発音を、インストラクターのチェックを受けて、正しい発音になるまで、繰り返し練習しなければなりません。

B. 文法 発音の学びは、この後、文の発音、もっと言えば、発話へとつながり、会話に発展し、最終的には、文構造に関係します。会話は、他愛のない冗談や四方山話、また世間話を含みますが、時には重要な情報の交換が行われる場にもなり得ます。それは時に会談や会合にも発展し、議論や口論を誘発します。

考えてみてください。会話が、自己紹介や挨拶に終わらないことは明白です。むしろ、その先こそ、本来の英会話です。だとすれば、英語によるコミュニケーションの肝は、「何がどうだ」とか、「誰がどうした」だとか、「それがなぜなのか」などを含めて、一定量の情報の交換が必ずある、ということです。英語を話して、楽しく会話が弾むためには、メッセージを担う最小単位、すなわち文の構造が、そこに一枚噛んでいなければならないのです。そこでの重要なのは、元来は全くばらばらの存在でしかない無数の言葉が、どうすれば秩序だった並べ方に変換できるか、ということです。会話が扱うのは、実は高度な構造体としての語群なのです。時間軸に沿って、ある順番に並べられた語が、メッセージを伝えるうえで、それにかかわる重要な諸法則に従ってコード化(暗号化)されているかどうかが問題です。語順一般にかかわる諸法則に則ってコード化されたメッセージが、コミュニケーションの相手に、紛糾することも、歪められることもなく、正しく伝わることが保証されなければなりません。これを可能にするのが、あらかじめ共有することが想定されている、文の解読キーとしての統語法であり、さらには、統語法を内部に含む英文法一般です。

C.  語彙 語彙は会話での情報交換に必要な多くの語や句を、任意の一人が、どれだけ豊富に身につけているか、の問題であり、英語での読み、書き、聞き、話す、のいわゆる四技能を、根本のところで支える語の知識、特に使える語の総数のことです。辞書を頻繁に引き、出来るだけ多くの語について、発音や品詞、意味範囲、慣用句、語源などに目を配った単語レベルの学習が要求される、地道な学習分野です。

5.統語法とは

では、統語法とは何でしょうか? 2 の文法の解説の中で、英文法の要に位置する法則としてすでに概略を述べたので、もうお分かりでしょうが、念のために、簡単にまとめておきます。統語法は、読んで字のごとく、「語」を「統べる」、すなわち各単語を文の中で、しかるべく、統御することです。ただ、各単語を統御すると言っても、進行形を作るために、ある動詞を現在分詞にしたり、受け身形にするために、別の動詞を過去分詞にしたり、いわゆる三単現(=主語が三人称、単数、動詞が現在)の s を忘れなかったりする、というようなことではありません。それは、使われる単語の変化形の有無にかかわりなく、すべての語の配置、言い換えれば、時間軸に沿った、秩序ある語の並べ方に関係する話なのです。

会話を進めるとき、必要な情報を伝えるのに必要な語を次々に正しく選び出せるか、が会話力を支える語彙力として、極めて重要ですが、それに加えて、選び出された語群が、発話者の意図を聞き手に正しく伝えるのに必要な語順になっているかが、さらに重要であり、ここが、統語法の本丸的な領域です。統語法がすべてきちんと身についていれば、話し手は、語を自動的に、常に正しい順番で並べることができます。後は、その英語を正しく発音しされさえすれば、自分のメッセージを正確に人に伝えることができるのです。

これで、統語法が何であり、なぜそれが極めて重要であるかの概略は、ひとまず、お分かりいただけたと思います。

 

 

 

 

 

 

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