何なの、連続性子音って?
2021/10/27
連続性子音とは?
英語子音の学び方
連続性子音って、何?
1.「奇跡体験!アンビリーバボー」
私たち日本人の英語の発音は、母音よりも子音、特に、/l/ と/r/ の区別、また/f/ と/h/とか、/v/ と/b/ の区別、さらには "s"、"sh"、"th" の区別が不明確である、だから聞きずらい、何とかならないのか、と、多分、日本人と英語で話した経験のある、多くのネイティブの英語話者は思っています。実際、それらの区別は、英語にとって死活的に重要であるにもかかわらず、現在只今、日本では、一向に抜本的な改善への動きが感じられません。
もっとも、英語発音の習得に苦労する、多くの日本人英語学習者たちにとって、子音よりも厄介なのは、むしろ母音の方です。英語の11個の母音、殊に「ア」の音に分類される五種類の母音、の区別の難しさは、ほとんど私たちの想像を絶するものがあるにもかかわらず、日本人の英語学習者への心配り、そして、英語母音のマスターに向けた特別訓練、また、それに必要な人員なども、全く手つかずであり、放りっぱなしになっています。
とは言え、勿論、ものには順番がありますから、今日のところは、日本人にとって比較的易しいとはいえ、一定量の相当厳しい訓練が必要な、英語子音の攻略に焦点を当て、子音の難しさを、それの克服法と併せて、きちんと論じてみたいと思います。
子音はその特性に応じて、大きくグループ分けして学ぶことが大切です。一般的に、子音の種類は、歯擦音、破裂音、鼻音などがよく知られています。これらは、子音の構音上の特徴をつかまえて命名されているので、学習上、大いに参考になります。しかし、日本人が英語の発音を学ぶ際には、もう一つの重要な区別があります。それは、英語子音をマスターする上で、どうしても欠かせない種類の訓練を含んでいるからです。また、その訓練は、やってできないことではなく、それを経て子音をマスターすれば、達成感が得られます。
でも、その前に、少し回り道をして、いずれ自然に、その区別に繋がるような、面白い事例を取り上げます。
テレビの長寿番組の一つ「奇跡体験!アンビリーバボー」の後半に使われている片仮名:「アンビリーバボー」は、一体どんな意味かな、と思われた方もあろうかと思います。これは、英語のunbelievable を片仮名表記したものです。この英語の品詞は形容詞で、意味は「信じられない」です。ただし、必ずしも、何かを強く否定するときとか、徹底した不信を表明するときに使う語ではありません。むしろ、驚嘆や茫然自失に近い状態を表す言葉で、「信じがたいほどの」とか「桁外れの」という意味でよく使われます。例えば、この英語の副詞形を使って、She is unbelievably beautiful. と言えば、「彼女は信じられないほど美しい。」という意味になります。
ですから、番組名の前半は「奇跡体験!」なので、後半の「unbelievable (信じられないほどの)」と意味の上でぴったり呼応していることが分かります。
2.片仮名表記の問題点
ところで、番組名の後半が英語の unbelievable から来ているとすると、「アンビリーバボー」という片仮名表記を「これはいかがなものか」、「これでよかったっけ?」と、不快に思い、疑問に思った方も、いらっしゃるかもしれません。確かに、通常の日本語的感覚からは、離れている感じがします。例を挙げて説明してみましょう。例えば「好ましい」という意味の英語 desirable は「デザイァラブル」と片仮名表記するのが普通ですし、「身に付けることができる」という意味のwearable は、「ウェアラブル」とするのが普通です。と言っても、こう表記しなければならない、という法律があるわけではありません。それは「多分、こんな所じゃないの?」という、日本人が共有している暗黙の了解事項であり、しいて言えば、その方が感覚的にしっくりくるから、という理由があるに過ぎません。もう一つだけ例を挙げれば、「手ごろな値段」は英語では reasonable price と言います。片仮名だと「リーズナブルプライス」となるはずです。実際、私たちはすでに、「お買い得な」という意味の英語である reasonable を、「リーズナブル」と片仮名表記したうえで、日本語の一部として使っています。
ところが、先ほどのテレビ番組は、英語の unbelievable を「アンビリーバブル」ではなく、あえて「アンビリーバボー」と片仮名表記しています。それは、この英語を、そのように発音させたことと同じです。ですから、もし、この読み方を、desirableや wearable や reasonable に当てはめると、それぞれ、「デザイァラボー」、「ウエラボー」、「リーズナボー」となります。すでに日本語になってしまった英語にまで広げて、この読み方を推し進めると、テーブル(table)は「テーボー(堤防?)」、ケーブル(cable)は「ケーボー(警棒?)」となってしまいます。これでは、日本語的感覚としては、とても受け入れられません。
もうお分かりのように、英語のunbelievable の片仮名読みを、番組の企画責任者は、カタカナ言葉に関して厳然として存在する、ある種の日本語的常識を、それこそ、「えいやー!」とかなぐり捨て、あえてぶっ飛んだ片仮名表記「アンビリーバボー」を採用したのです。
3.あえて「アンビリーバボー」とした理由
想像を巡らせば、番組の企画制作者は恐らく、ターゲットである若い視聴者の、前例や慣習にとらわれない、柔らかく素直な感性を信頼し、飛びっきりかっこよく、英語的インパクトのあるネーミングを探していたのです。もし、この番組を成功に導いた要因の一つが、このネーミングにあったとしたら、番組企画者の優れた英語的感性と時代とが、見事にマッチしていたということになります。ついでに、これも私の勝手な想像ですが、番組のスタッフに、たまたま英語の良くできる人がいて、「英語のunbelievable の終わりの発音は、片仮名で言えば、絶対「ボー」だよね」と密かに思っていたはずです。最終的な判断を任された責任者も、この斬新なネーミングの提案に接して、思わず直感的に、「そう、それだよ。」と叫んだかもしれません。
「何を言ってるんですか。unbelievable は絶対そんな風に聞こえるはずがありませんよ。英和辞書にも desirable は/dezaiərəbl/、wearable は/weərəbl/、reasonable は /ri:znəbl/ と記されているでしょう。」と、型どおりの、しかし極めて正しい反論が、間髪を入れず、木霊のように跳ね返ってくるかもしれません。厳密にはそのとおりです。英語辞書の立場からは、どんな英単語でも、スペリングが-ble で終わる語の語尾-bleは、発音記号で発音を表記すれば、 /bɔ:/ ではなく、 /bl/ です。言語科学的には、「ボー」の出る幕はないのです。
3.なぜ「アンビリーバボー」と聞こえるのか
しかし、英語学習的には、「ボー」という片仮名読みには、少なくとも、一考の価値があります。何故、「ボー」が採用されたか、その経緯をもう一度辿ってみましょう。再確認しますが、片仮名にして、番組のタイトルの一部に使われた英語、 unbelievable 、の -ble の読み方は、「ブル」ではなく「ボー」でした。そして、このネーミングは、「そう聞こえたから」を根拠にしていたはずだ、と申し上げました。多分、そう考えて間違いないでしょう。でも、ここで話を終わらせてはなりません。実は私たちにとって、ここが正念場であり、これからの大事な話の出発点なのです。というのも、もし「そう聞こえた」のが事実であるなら、私たちが性根を据えて、本格的に追及すべき課題は、「ネイティブの英語話者が unbelievable を発音するとき、何故、日本人に限って、常に、この語の終わりが/bɔ:/と聞こえるのか、その発音機制的理由は何か?」ということだからです。
4./l/は「連続性子音」である
この問いに対する私の答えは、/l/ 音が「連続性子音の特性をもつから」です。でも、「連続性子音」という言葉は、耳慣れず、誰も聞いたことがありません。それもそのはず、これは私の造語だからです。そして、私の言う「連続性子音」は、英語で言えば、 a consonant capable of being prolonged steadily and indefinitely, avoiding any apparent change to be brought about in its sound quality のことです。これは、英語の子音の発音を人に教える際に、私が使ってきた便宜的な分類法で、日本語で定義すれば、「音質を変えることなく、息の続く範囲で、安定的に、任意の長さまで、その音を引き延ばしうる子音」です。「え、それ何?ちっともわからない。」という、御尤もな声には、その要件を満たす具体例をもってするのが、礼儀であり、当然の義務です。
そこで、一番わかりやすい例として、sea(海)、sister (姉妹)、 say (言う)などに共通の、語頭のアルファベット"s" に対応する子音(発音記号で示すなら/s/)、がその一つであり、また zoo (動物園)の語頭のアルファベット"z" に対応する子音(発音記号で示すなら/z/)がともに、連続性子音です。次にこれらの子音のどこがどのように、連続性を持つのか、私の構音的解説を通じて感じ取っていただきます。の子音なのかを例えば /s/の音は、口を半ば閉じ、一ミリほど開けた上歯と下歯の間から、息を静かに出し続け、歯と歯の間をすり抜ける息がこすれる音を出すように、舌を下の歯の裏にピタリとくっつけたまま、舌の固定位置と形を加減します。歯と歯の間をすり抜ける自分の息を、鋭く耳に響く無声音になるように保ち、しかも息の続く限り、その音をそのまま継続させることは、練習すれば誰にでもできます。「なるほど、これが連続性子音なのか」と、自分でその音を出すプロセスを実体験された方なら、必ず、深く納得していただけるはずです。同様に、/s/音を有声化することで得られる/z/音も、それがしっかり発音できた方は、「なるほどこれも連続性子音の仲間だ」と、ご納得がいくと思います。
同様に、/f/も/v/も「連続性子音」です。あるいはまた、/ʃ /も/ʒ/も「連続性子音」です。鼻音の/m/や/n/もまた「連続性子音」です。これらはすべて、同じ音をコンスタントに、無理なく継続させうる、という点を共通に持っています。
そして、/l/ 音も、正しく発音される限り、その音質を変えることなく、自分の息の続く範囲内で、無理なく延長できます。ですから、「連続性子音」なのです。「何だ、そんなこと誰でもやっているよ。何を今さら、もったいぶって。」という方も、きっと、少なからず、いらっしゃることでしょう。でも、ここまで言われても、全くピンとこない人の方が、多分、圧倒的に多いはずです。あるいは、「へー、そうなの。でも、それがどうしたの?」と、傲然と、開き直る人の方が、残念ながら、ずっと多いのです。その結果、大抵の日本人は、/l/ の音を、全く不用意に、何の危険も予想せずに、日本語の「ル」で置き換えようとします。でも、/l/と「ル」は、根本的に違う音です。(ついでに言えば、/r/と「ル」も根本的に違う音です。)もし、安直に置き換えると、途端に深刻なコミュニケーション障害に見舞われる、といういことを、大部分の人たちはご存じないのです。
「ふーん。でも、そこまで言い切るなら、それ相応の証拠を出せ!」とおっしゃる方には、よく引き合いに出される次の例があります。rice (お米)とlice (虱=しらみ)を発音で区別できるかどうか、というのが、一発で人を納得させるために使われる定番です。「おや、これだけかい?」とおっしゃる方には、次のペアー群はいかがでしょうか:right(権利、右)と light (光、軽い)、 road (道路)と load (荷物、荷重)、writer (書き手、作家)と lighter(ライター)、 pray(祈り、祈る)と play(遊び、芝居)、read (読む)とlead (主導する)、red (赤い、赤)とlead(鉛)、wrist(手首)と list (一覧表)、row (列、漕ぐ)と low (低い)、rust(錆)とlust(情欲)、grow(成長する)とglow(白熱、火照る)、fry(揚げる)とfly(飛ぶ、蠅)、free(自由な)とflea(蚤)、reef(砂州)とleaf(葉)、broom (箒)とbloom (開花、花咲く)、rake(熊手)とlake(湖)、wrap(包む)とlap(膝)、correct(正す、矯正する)とcollect(収集する、徴収する)river(川)と liver(肝臓)、room(部屋、余地)とloom (織機、ㇴっと現れる)、rook(ミヤマガラス)とlook(見る)、grass(草)とglass(鏡)、race(競争)とlace(レース)、frog(蛙)とflog(鞭で打つ)、rock(岩)とlock(鍵、鍵をかける)、rink(カーリング競技場、スケートリンク)とlink(鎖の環、つなぎ、結合)、wrack(破滅、拷問台)とlack(欠乏)、bright(輝く、明るい、聡明な)とblight(葉枯れ病、枯らす)、breed(繁殖させる、引きおこす、品種)とbleed(出血する)、reach(届く)とleach(濾す、濾過する)またはleech(蛭)、breach(違反、不履行、裂け目)とbleach(漂泊する、漂白剤)、branch(枝)とblanch(白くする、漂泊する)、royal(王の、高貴な、最高の)とloyal(忠義な、忠実な)、royalty(王位、王の尊厳、印税)とloyalty(忠義、忠節)、wrong(間違いの、不正の)とlong(長い)、brew(醸造する)とblue(青い)、crew(乗組員)とclue(手がかり)など。これらを、遅滞なく、明確に、発音で区別すること、また瞬時に聞き分けることは、日本語の言語基盤の上で安眠をむさぼり、「ル」に含まれる音だけで対処しようとする限り、未来永劫、望み得ないのです。そして、「なるほど、これ程とは思わなかった。」と、多くの方も、ようやく、事の深刻さに、改めて、ため息をつかれたのではないでしょうか。
逆に、英語母語話者が、日本人のラ行の音で代用された/l/音や/r/音を含む英単語を耳にすると、どう反応するでしょうか。実は、英語母語話者には、日本語のラ行の音と英語の/l/音や/r/音は、根本的に、似て非なる音なので、日本人のラ行の音は、まるで性能の悪いラジオを聞いているかのように、その時々の電波の具合で、/l/にも/r/にも聞こえるのです。英語母語話者が、これはきっと自分の聞き間違いに違いない、と思って何度聞き直しても、その都度異なる音に聞こえる可能性が極めて高いのです。
一方、日本人は、ラ行の音では代用できない音が、英語には二つも存在し、しかもそれらを区別することが、多くの語を別の語と弁別する上で、根本的に重要である、という事実を露ほども知りません。ですから、きちんと、必要な訓練を受けないまま、いくらその場限りの努力をしても、この音の壁は、ちょっとやそっとでは、乗り越えられません。こうして、英語母語話者と日本人が出会えば、お互い、事の真相を知らない者同士ですから、どんな手も打ちようがなく、お手上げになって、苦笑いするか、パニックになるのが落ちです。
5. 日本語の「ル」と英語の/l/の違い
日本語の「ル」は、敢えて近似的な記号で記すと、/lru/ です。言い換えれば、「ル」=/lr/ +/u/ なのです。「ル」に含まれる子音は、正確に言えば、一旦硬口蓋にピタリとつけた舌先を、一瞬、息を通して、軽くはじく音、そして、舌先が硬口蓋から勢いよく離脱するときに出る音です。(/lr/は、私が日本語の「ル」の近似値的な音として、今回限り、便宜的に使ったものであり、専門的には、/l/ と /r/ を合体させた /ɺ/、もしくはこれに似た記号が使われます。)
そして、ここで、私たちが自覚しなければならないことは、日本語の「ル」に含まれる子音は、その音の発出機序の性質上、「その音の音質を変えないで、息の続く限り、継続して出し続ける」ことはできない、ということです。「ル」に含まれる子音は 、上に説明した通り、硬口蓋につけた舌先を、そこに息を通し、軽くはじいて離脱させることで得られる、一種の破裂音であり、はじいた瞬間に生成・消滅します。音の生成と消滅は同時に、うち重なって、一瞬のうちに起こるのです。その結果、その音は、全くもって連続性を持ち得ないのです。英語学習者は、このことを、一瞬の自己観察で見抜かなければなりません。
この音は、このように、決して連続的ではありえないので、「連続性子音」に対して、「一過性子音」と命名しておきます。
6.英語の/r/音の出し方
ところで、「ル」に似た子音で、日本人にその発音が難しいもう一つの英語子音があることは多くの人が知っています。それは、発音記号で書くと/r/です。/l/の音は/r/の音と対照的に学ぶとより分かりやすいので、先ず/r/の音から音の出し方を学びましょう。さて、せっかくなので、もうおなじみの問いを発してみましょう:「英語子音/r/ は「連続性子音」でしょうか、それとも「一過性子音」でしょうか。」答えは、「連続性子音」です。その理由は、次に説明するこの音の出し方を学ぶことで、おのずと分かります。
/r/の音は次のようにして出します。舌を前方の硬口蓋にうんと近づけ、硬口蓋に半分接触させるつもりで、舌先を激しく連続的に振動させると、一個の連続性子音になります。それは、 /l/ 音が、/l/ 音として完成する直前に、けたたましく響き渡る有声の振動音に置き換わったときに出る音です。この音は、ネイティブの英語話者には、/l/ 音ではなく、100%、/r/音として認知されます。
私がまだ大学の英語英文学専攻の学生だった頃、ケンブリッジ大学出の英国の詩人の先生が、英語の授業の中で、/r/音について教えてくださったとき、声を出しながら、自らの舌を強烈に震わせてみせ、これが/r/の音です、と言われたのが今でも鮮明に記憶に残っています。もちろん、その先生は、普段英語を話すときに、/r/音を含む語を話されるとき、いちいち強烈に舌を震わせて発音されたわけではありません。
ですから、ネイティブの英語話者の会話の中の /r/音は、普通、軽くくぐもった感じの音です。それは、硬口蓋からわずか一ミリか二ミリの距離まで舌先をのばし、伸ばした舌先を、そこで固定的に保持し、息と声を同時に出すと出る音です。舌先と硬口蓋との間のわずかな隙間から、連続的に軽い、半分かすれるような、有声の振動音が出るように練習します。この軽い振動音は、有声の連続性子音として、息の続く限り、いくらでも引き延ばすことが出来ます。
7.英語の/l/ 音の出し方
これに対して /l/音は無振動です。なぜなら、舌先を硬口蓋にピタリとくっつけ、舌をそのまま、ピクリとも動かさず静かに保ち、ゆっくり静かに「うー」と言う声を出すと、自然に出てくる音だからです。連続的、かつ安定的に出すことのできる音なので、「連続性子音」の仲間です。舌先が硬口蓋をぴたりと塞いで、口の中の空気の通りを半分塞いでいるので、母音の「ウ」は成立しません。出てくるのは、ややくぐもった変な音です。しかし、これが、まぎれもなく、正しい/l/ 音なのです。この、いかにも「変な音」に慣れるまで、毎日5分くらい、一か月ほど練習するとよいでしょう。
8./l/と/r/の音を対照的に練習する方法
/l/ と /r/ の音は、それぞれ、きちんと音の出し方を覚えた後は、両者を対照的に練習すると両者の区別が正しく定着します。例えば、
1. light / right 2. fly / fry 3. lice / rice 4. low / row 5. play / pray 6. flee / free 7. load / road 8. wrap / lap
などをしっかり区別して発音できるように、そして区別に自信がつくまで、倦まず弛まず、練習してください。
9.英語の一過性子音にはどんなものがあるか
日本語の「ル」は一過性子音 を含んでいました。では、英語の一過性子音にはどんな音があるのでしょうか。まず、 boy の /b/ がそうです。また、 pen の /p/の音がそうです。ほかにも、 key の /k/ の音や、girl の /g/の音がそうです。さらには、tennis の /t/ の音や、desk の /d/ の音もそうです。これらの音は、破裂音という名がついています。両唇をしっかり閉ざし、思い切って息を強く出しながら、それを爆発的に突破するとき出る音が、/p/であり、 /b/なのです。また、喉の奥をしっかり閉ざしてから、思い切って息を強く出しながら、それを爆発的に突破するとき出る音が /k/ であり、 /g/です。さらには、舌先を上の歯の裏側にピタリと当て、口内から息の出るのを塞いでおき、息を強く出しながら、塞がれているところを爆発的に突破するときに出る音が /t/であり、/d/です。以上、三種類の音は、唇や喉や歯でそれぞれ息が一旦塞がれたことを覚えおきましょう。次に、以上の三か所から出る音には、それぞれに所属するペアー音があったことを思い出してください。それらは、有声音と無声音のペアーです。声を出すのが有声音、声は出さずに息だけ出すのが無声音です。
10.一過性子音の発音練習
これらの一過性子音の練習は、語頭に出現する場合、語中に出現する場合、語末に出現する場合に分けて練習すると、よりよく定着させることができます。例えば次のようにします。
1.boy / about / describe 2. pen / support / sleep 3. key / racket / take 4. girl / again / bag 5. tennis / hotel / shoot
6. desk / sudden / road
11.結論
さて、最初の話に戻れば、unbelievable の最後の音節である-able は/əbl/と発音されます。すなわち、/ə/の後、/b/ と/l/が間髪を入れずに続きます。そして、/b/は破裂音、/l/は連続性子音なので、/b/ に比べれば、/l/はかなり間延びして聞こえます。つまり、全体としては「ボー」と聞こえるのです。ネイティブの英語話者は、/b/の音に入る前から、舌を硬口蓋に当て、準備万端整えています。/b/の音はあっという間に終わりますが、すでに硬口蓋についている舌は、そのまま動かさず、スムーズに/l/音に移行します。/bə/と発音したかな、と思われるときには、すでに自然に/l/音に移行しているのです。/b/と/l/が、このようにくっつき、しかも/l/が連続性子音なので、「ボー」と聞こえるのです。
ところで、-bleで終わる語は他にも、incredible, probable, sociable, fashionable, edible, reliable, など沢山あります。また、-ble には、類似の変化形として、-ple, tle, -cle などがあります。例えば、apple, title, bicycle などがそうです。これらの形は、通常、「プル」、「トル」、「クル」とルビを振りがちですが、実際には、「ポ―」、「トー」、「コー」とルビを振る方が、実際の英語の音に近いのです。けれども、せっかく日本語になってしまっているカタカナ語を無理に発音通りに変えてしまうと、混乱します。ですから、英語の発音の学びは、カタカナ表記とは別個に、辞書に使われている発音記号を使って、きちんと正しい練習を積んで行われるべきです。
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