主語って何?
2020/12/03
主語って何だろう?
主語は文にとっての主人
英語の時間に何度先生から「主語」という言葉を聞かされたでしょう?耳にタコができるほどかもしれませんね。でも、改めて「主語って何ですか?」と聞かれたら、どう答えてよいか迷いませんか?あれだよ、と心ではわかっていても、いざ口にするとなると、「ええっと。」と言ったきり、そのあとは、あまりはっきりしないことを何やら小声で言ってしまいそうではないですか?一見、最も簡単なように聞こえて、実はかなり難しい文法用語でもあるのが実態です。実は、主語を定義するには、まず文を定義する必要があり、その文を定義するには要素と文型の関係を定義しなければならないからです。ですから一言では定義できないのが実態なのです。
でも、あえて一言でいえば、主語は文の主人なのです。ただし、文の主人は人間でない場合もあるので注意が必要です。例えば、The dog barked. では、主語は犬です。A frog junmped into the pond.では、主語はカエルです。A war broke out.では、主語は戦争です。A house used to stand here.では、主語は家です。It doesn't matter.では、主語は"it"です。ですから、主語は文の主人だと言ったのは、主語は文という一軒の家の主だよ、というほどの意味です。もちろん、人間は必ずしも文に頼らないで意思表示をしたり、感情表現をすることもあります。例えば、間投詞は当然として、他にも、Right.とか、Sure!とか、Of course.とか、Really?とか、So what?とかがそうです。また、Waht?とか、Where?とか、How?とか、When?などと、単に疑問詞をぶつける場合もあります。でも、英語では、日本語に比べて圧倒的に文を使って意思表示をします。日本語の場合は、「共有されていると考えられる状況」を織り込み、相手がそれを前提にこちらの意思を受け止めてくれるものと期待しながら、コミュニケーションがとられます。「いい天気だこと。」「寒いですね。」「元気?」などで十分話が通じるのです。英語における文の地位は、日本語のそれよりずいぶん高い、と言えるのです。そもそも、日本語において「文」という概念は定着しているとはいいがたいのです。「文」よりも「文章」という語のほうが一般的です。例えば「長文読解」と言えば、長い一文ではなく、長い文章のことであり、段落が幾つもあるような文章のことです。英語でいえば、前者は sentence であり、後者は passage です。また、「文」は文法用語というよりも、「文学」の文であり、「文武両道」の文であり、「文人」の文であり、「人文学」の文であることのほうが多いように思われます。ですから、英文法では、「文」、すなわち sentence の重要性を、まず強調しなければならないのです。英文法でいう「文」が何かも分からずに「主語」を語ることは、実はナンセンスなのです。しかし、「文」を理解するには、逆に「主語」が何かを理解するのが早道でもあるのです。
その上で、改めて申し上げれば、英文法を学ぶ上で一番難しいのが、実は「主語」であり、その取り扱いです。主語という言葉自体は、だれでも何度も耳にしていますから、一人残らず理解した気になっています。そこで、いまさら分からないとは言いにくいし、実際、だれ一人先生に「主語って、何ですか?」と質問したこともないはずです。でも、わたくしの経験でいえば、ちょっと難解な英文を学生に提示して、この文章の主語は何かな?と聞くと、たいていみんな黙ってしまいます。英語の時間に一番良く耳にする言葉のはずなのに、なかなか答えられないのが、文の主語を指摘する問題です。逆に、相当難解な文でも、主語がわかれば、その文の意味も半分以上分かっているはずです。それほど主語は文の意味と直結しており、難解な文の意味を考えるうえで、主語ほど重要なヒントとなるものはないのです。
ではなぜ「主語」は誰でも知っている文法用語なのに、いざ文の主語を指摘するとなると、そんなにてこずるのでしょうか。この謎に挑戦してみましょう。
言うまでもありませんが、中学生レベルの簡単な文で主語がわからない、という人はいません。問題は、いくつもの文が複雑に絡む複文と言われる文の中の主語を指摘する際の見つけにくさです。簡単な文から入っていきましょう。単文の場合は主語はたいてい最初に現れます。副詞が最初に現れても、それほど戸惑うことはありません。At last, he succeeded in climbing Mt. Everest. という文では、「ついに」(at last) という副詞句が文頭に来ていますが、「彼」(he) が主語であることは紛れようがありません。少し複雑になるのは、文頭に従属節が来ている場合です。「・・したとき」、「・・だから」、「もし・・・だったら」、「・・・かどうかに関係なく」、「一方で・・・だけれども」などという従属節が先行する際には、少しややこしくなります。それはこのことによって、文が内部に節を含む文になっているからです。文中にもう一つ、あるいはそれ以上の別の文が含まれているとき、どれが主節でどれが従属節なのか迷いやすいのです。大体、文中に5個以上の文が絡んでいるとき、一目で主語を見抜くのは極めて困難になります。それは、従属節の中にもう一つの従属節が含まれていたり、補足説明のための分詞構文が含まれていたり、主節の中の一語に、関係代名詞を使った長い形容文が付随していたりするからです。ほかにも、前置詞句やto不定詞などが文中の名詞や動詞に必死に食らいついているのが現状です。
数行にわたって、ほとんど絶望的なくらいに多くの節や句が絡まっている現実を目の前にしても、少しも慌てず主語をすっと見つけ出せれば、もうその人は英語の上級者です。では、何かコツがあるのでしょうか。そこで、次回は、主語の見つけ方について考えてみましょう。